関節は膝に限らず、どこの関節でも負担が直接かかってはいけない組織です。関節にかかる負担は関節を動かす筋肉がほとんどを吸収するようになっています。筋肉は力を発する役割と負担を吸収する二つに働きが分かれています。この負担吸収の役割が防御です。膝の防御機能が低下すると膝関節は侵され、軟骨減少などが起きてきます。

 

 

症状の悪化・曲げ伸ばし障害の悪化

 

 

関節は防御の為、ヒザ関節の骨量を増やしにかかります。ところが、これが裏目にでます。理由は、同時に動く他の関節と動きが合わなくなるからです。

この結果、防御する筋肉がさらに役割を果たせなくなり、ヒザ関節周辺の筋肉が非常事態になります。

どうなるかと言えば筋肉の両端にに付いている腱が筋肉を通常よりはるかに強く引っ張るようになります。

こうなるとヒザが伸びなくなります。つまりヒザの【くの字曲がり】が始まります。

そして、次はヒザ関節と足の付け根の関節でうまく力の分担ができなくなり、ある角度から深くヒザを曲げられなくなります。

その原因は関節の位置が変化するからです。

例えば、ヒザ関節が前方に飛び出したり外を向いたりしているのがその状態です。

その結果、ますますヒザ関節の変形は進みます。しかし、この段階になると筋肉の力を発する役割も相当に機能を低下させています。

日常の動きで、かなりの不便を余儀なくされ強い痛みを感じる人のヒザ関節やそれを動かす筋肉と腱はこのような状態になっていきます。

この状態に何かの原因が加わり、発生する捻挫痛や、それに伴う動きの障害から脱し、日常の痛みが出ない様にするには、あたかも時計の針を逆回し

する様に、発症から今日までの進みを遡るように、それぞれの局面で起きた過去の状態を、現状から段階的に解決して行くようにしなければ

なりません。その際、特に重要な事は筋肉の機能回復です。

動いた時や動かし方で出る痛みは動かす道具である筋肉と、その筋肉を動かす神経から発しています。

ヒザを動かす神経は足の付け根から太ももの表と裏、そして関節周囲に多数、血管のように走っており、ヒザの痛みはこれらの神経群から発し、筋肉の機能

レベルで痛みの出方や程度が決まります。

 

関節の【並び合わせ術】はヒザの痛みを早期に解消させる方向へ向かわせます。

 

先ほど述べたような原因で起こるヒザ関節のネンザ痛は悪い状態での症状固定段階は勿論の事、その手前の悪化過程であっても、多くの場合、変形へと向かっています。

その向かい方を説明すると、加齢性のヒザ痛では、骨の傾きや並びに大きな特徴がみられます。

前述していますが、人の太ももの骨は股関節の所で曲がっています。この曲り角を頸体角と呼んでいますが、実はこの頸体角は年齢と共に変化していきます。

三歳の頃は平均的では145度位ですが、成人になると126度位です。

老人では、平均で120度位になります。このような変化は当然、股関節の動きに大きな影響を与えますが、通常この角度変化は、長い年数をかけてゆっくりと

進みますから股関節を動かす筋肉もその変化に本来は対応できます。

しかし、この対応は一つの条件を伴います。その条件は、骨盤の傾きもそれに応じて変化させることです。

そして、これは次の変化に自動的につながります。それは太ももの骨(大腿骨)のネジレ角変動です。

この変動角は4度から20度までの範囲があり、かなりの変動幅を持っています。頸体角変化や骨盤の傾き変動なら、これらの変化に大方の筋肉は対応いけます。

しかし、ただ一つ、対応しにくいものがあります。それは太ももの骨を、守り、またヒザの曲げ伸ばしの70%を支配している大腿四等筋と呼ばれる太ももの筋肉です。

また、それが大腿筋のネジレ角度の変動にも大きな影響を与えています。通常、大腿骨のネジレ角度は骨盤の傾きに自然適合しています。

しかし、ヒザ関節が変形している人にО脚が多くみられるのはその為で、ほとんどの人はカカトが内向きになっています。

こうして三関節(ヒザ関節・股関節・足関節)の並びが崩れてきます。

 この【並び崩れ】に何かの原因が加わりヒザにネンザ痛を発生させます。それが症状の悪化をさらに促進させることになり、いわゆる【痛みの悪循環】に入ります。

従って、ヒザ痛の解消は先ずこの悪循環を断ち切ることから始めなければなりません。それにヒザ関節の【並び合わせ術】が非常に有効です。

この関節の【並び合わせ術】は筋肉を利用しています。ヒザ関節を始め、あらゆる関節を動かす最大の道具は筋肉です。

それゆえ、この筋肉が関節位置を正しい方向から支持ができるように【筋肉の習慣性】を変えると、関節の【並び合わせ】ができ、これにより

ほとんどの痛みは早期に解消していくことが多いです。

 

ヒザ痛の恒常的解消への道のり

 

三関節の【並び合わせ】により、ひとまずの痛みは早期にとれますが、その恒常的解消にはあと二つの要素が必要です。

一つは、腱の過剰な緊張を取り除くこと、二つ目は筋肉の賦活です。腱と筋肉は異なる組織ですが、働きは、両者が一体となっています。

筋肉は腱の働きで力を出したり、緩めたりしています。この関係はよく、車のアクセルとブレーキの関係にたとえられます。

ヒザ関節の変形が進むと、腱の機能がおかしくなります。つまりブレーキが故障してしてきます。

もしあなたが車の運転をするとして、ブレーキが故障ぎみの車があれば、恐くてとてもアクセルを踏み込めないでしょう。

自転車でもつよくペダルをこげないと思います。ヒザ痛の人は、この状態がヒザ関節を動かす筋肉や腱で起きているのです。

例えば、階段を下るときにヒザ痛の出る人は自分が持っている筋肉へ必要な力を伝えきれてないのです。(神経筋連絡不全)。これは自分の意思とは別の状態です。従ってヒザ痛の恒常的解消には、腱や筋肉の制御機能を回復しなければなりません。